lit_logの本棚
感想

言語学の基礎を改めて整理したいと思い手に取ったが、これほどまでに系統的で透徹した入門書は珍しい。音声学という一見すると専門的な領域を、しかし決して簡潔すぎず、むしろ充実した説明で紐解く著者の手腕が光っている。 特に印象深いのは、音韻体系の理論的背景と実際の言語現象を結びつける手つきだ。抽象的な概念に陥らず、常に具体例を交えながら読み進めることができた。複雑な音声記号についても、図版と丁寧な説明によって理解が深まる。フリーランスとして執筆や思考を仕事とする身からすると、言語の本質に迫る知識は確実に思考の質を高める。 白水社の新書という形式も適切で、携帯しやすくありながら内容の密度は損なわれていない。改訂版とあるだけに、最新の研究成果も適切に反映されているのだろう。言語に携わる者であれば、必読の一冊といえる。