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ノスタルジー大通り

ノスタルジー大通り

細川周平 晶文社 1989年7月1日

感想

旅というテーマでエッセイを探していた時に、このタイトルに目が止まった。ヴェンダースやタルコフスキーといった映像作家と、ランボーやニーチェといった思想家を横糸に、著者自身の旅の経験を縦糸に織り込んでいくという構成に興味を引かれたのだ。 読み始めてすぐに気づくのは、この本が単なる旅のエッセイではないということだ。「旅とは何か」という根本的な問い直しが、随所に息づいている。映画や文学作品の中に現れる「移動」と、著者が実際に経験した土地の移動とが重ねられ、次第に旅という行為の多層的な意味が浮かび上がってくる。 文体も洗練されており、密度の濃い議論であるにもかかわらず、読んでいて息苦しさを感じない。むしろ、その疾走感に巻き込まれるように先へ進みたくなる。フリーランスとして自分自身も常に「移動」の中にある身だからこそ、著者の視点がしみじみと響いた。 慎重に本を選ぶ方だが、この一冊は迷わず手に取って正解だった。知的興奮と読む喜びを同時に味わえる、そんな稀有な体験だと感じている。

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