本大好きおじさんの本棚
感想

医療現場では日々判断と選択の連続です。この本もまた、読者の選択が物語の行方を左右するという珍しい仕掛けになっていました。 二つの章「ゲオスミン」と「ペトリコール」。どちらから読むかで、同じ登場人物たちの関係性や真実が変わっていくというコンセプトは、確かに新しい試みだと思います。道尾秀介らしい綿密な構成が感じられました。 ただ、正直なところ、読んでいて引き込まれる強い魅力には欠けた気がします。仕掛けの複雑さに気を取られてしまい、登場人物たちの心情がもう一つ伝わってこない。二つの順序で読み比べると違う結末になるという工夫は興味深いのですが、それが必ずしも物語を深くしているとは感じられませんでした。 通勤時間に気軽に読むには十分でしたが、医療の現場で得られるような「人間の本質に触れる瞬間」がこの本には少なかった。仕掛けは上手いけれど、心に残るものがあればもっと良かったなというのが、読み終わった後の率直な感想です。

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