本大好きおじさんの本棚
感想

直木賞受賞作『サラバ!』から5年。著者の新作を手にしたとき、正直なところ期待と不安が入り混じっていました。前作の圧倒的な力に比べてどうなのだろうか、と。 でも読み始めたら、その心配はすぐに吹き飛びました。幼なじみ同士の人間関係が時間とともに逆転していく様子、人生の機会に導かれて異国で新しい生活をはじめる若者たち。複数の視点から描かれる登場人物たちの物語が、じわじわと心に染み込んでくるんです。 医療の現場にいると、人間の傷や痛みについて考えることが多いのですが、この作品で描かれる「きず」というのはもっと深い層のものなんですね。それでいて、どこか前に進もうとする勇気も感じられて。 3年の執筆期間を感じさせない完成度です。気軽に読んでいたつもりが、ページをめくる手が止まりませんでした。仕事の疲れた夜に読むと、ちょうどいい深さで自分の人生も照らしてくれるような。本当に素敵な作品に出会えた、そんな気持ちです。

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