洋子の本棚
感想

歴史の授業では習わない側面を知りたくて手に取った一冊です。本書は1945年3月の東京大空襲という、日本史上最大級の惨禍を丁寧に検証した作品。新書という限られたページ数の中で、事前準備、当日の経過、そして被害の実態まで、綿密な取材に基づいて構成されています。 何度も読み返しながら感じたのは、著者の静かだけれども揺るがぬ視点です。感情的な叙述に流されず、事実と数字、証言をもって戦争の本質を浮かび上がらせる。十万人を超える犠牲者の存在を、単なる統計ではなく一人ひとりの人生として向き合う姿勢が伝わってきます。 親世代から戦争の話を聞く機会が減る中で、次の世代に何を伝えるべきか考えるようになりました。本書はその問いに真摯に応えてくれます。岩波新書らしい知的誠実さで、日本人として避けて通れない歴史と向き合える良書です。