洋子の本棚
感想

日本ホラー小説大賞受賞作ということで、期待を持って手に取りました。保険会社社員が思わぬ事件に巻き込まれていく、という設定は確かに興味深く、序盤のサスペンス的な緊張感は引き込まれます。 ただ、読み進めるうちに、物語の展開が予測可能な範囲に収まってしまう印象を受けてしまいました。主人公の調査が深まるにつれてホラー要素が強まるのですが、その恐怖の質が、現代文学として特に新しい視点を提供しているわけではないように感じます。 文章自体は読みやすく、ペース感も良好です。ただ、人間の深い部分に迫るような心理描写や、社会への問題提起といった重層性が、私が好んで読む人文思想書と比べるとやや薄い気がしました。 エンタメ小説としての完成度は高いと思いますし、ホラー好きの方には十分満足できる作品かもしれません。けれど、私個人としては「なるほど」という満足感よりも「それで?」という物足りなさが残ってしまいました。良い小説ではありますが、心に深く刻まれるほどではなかったというのが正直な感想です。

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