雄一の本棚
感想

久しぶりに面白い小説に出会った。著者の他の作品は映画化もされているので名前は知っていたが、今回はその期待を上回る仕上がりだと感じる。 架空の記憶と現実が交錯する設定は、一見複雑かもしれないが、読み進めるうちにその巧みさが見えてくる。孤独な青年が実在しないはずの幼馴染と出会うという展開は、単なるファンタジーではなく、人間関係の本質的な部分に切り込んでいるように思える。 什么より心を掴まれたのは、登場人物たちの会話だ。二人の交わす言葉の端々に、作者の深い思考が感じられる。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」というセリフから始まる物語は、単に懐かしさを呼び起こすのではなく、読者自身にも問いかけてくるようだ。 自営業で多忙な日々を送る身としては、こうした静かで内省的な作品は実に貴重だ。気軽に読める文庫本というフォーマットも、疲れた夜に手に取りやすい。最後まで一気読みしてしまった。不思議と余韻が残る良作だ。

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