れんの本棚
感想

ここ数年、並行世界を舞台にした歴史冒険小説が人気だが、本作はその中でも異彩を放っている。五分のズレという小さな時間差が生み出す、もう一つの日本という設定が秀逸だ。 主人公の小田桐が気づくと泥濘を行進しているという冒頭から、この作品は独特の緊迫感に包まれている。戦後史が大きく異なった世界での日本という題材は、歴史に関心がある身としても非常に興味をそそられた。設定だけでなく、描写の迫力も素晴らしく、ページをめくる手が止まらなくなるほどの没入感がある。 さすが幻冬舎の本だけあって、エンタメ性と思想性のバランスが取れている。話題になるのも納得できる作品だ。ただ、ボリュームがある分、仕事で疲れた日は読み進めるのに時間がかかる。それでも、その疲労を吹き飛ばしてしまう魅力がある。 久しぶりに大長編を読み切った充足感を感じた。このジャンルに関心のある人はもちろん、ビジネス書ばかり読んでいる人にも、一度手にとる価値は十分あると思う。

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