又吉直樹の新作ということで手に取ってみた。『火花』から10年、相変わらず人間のやりきれなさに向き合う作家だなという印象だ。 主人公の岡田は会計士という堅実な職業についているのに、高校時代の友人・横井との関係から徐々に泥沼へ。この設定が実に巧みで、誰もが身に覚えのある「人間関係の複雑さ」が丁寧に描かれている。借金という俗臭い題材なのに、そこから人生の本質的な問題が浮かび上がってくるあたり、さすがである。 何より面白いのは、絶望的な状況の中にもユーモアが息づいていることだ。笑うべきか悶々とするべきか、その葛藤の中に人間らしさがある。自営業をしていると、こうした複雑な人間関係に直面することも多いから、余計にリアルに感じられた。 完璧さを求めすぎず、ダメさを抱えながら生きることの大切さが伝わってくる。気軽に読める一冊でありながら、読後もしばらく考えさせられる。そういう余韻が好きだ。
最近登録された他の本の感想
2026年08月21日
このシリーズを読み始めたのは、歴史時代ものの傑作探しがきっかけだったと思う。いざ第3弾に手を取ると、吉原という舞台の濃密さにぐっと引き込まれてしまった。 闇医者おゑんという主人公の立場が実に面白い。表の世界には出ない、しかし多くの人間が関わる秘密を知る人物だからこそ、江戸という時代の光と影が見事に浮き彫りになる。この巻では謎の病が遊女たちを襲うという設定で、医学的な謎解きと人間ドラマが巧みに絡み合っている。 物語の展開も上手いもので、つい続きが気になって徹夜気味になってしまった。自営業のため、朝寝坊できるのが救いだ(笑)。歴史小説としての重厚さと、エンタメ性のバランスが取れているのが、このシリーズの最大の魅力だろう。文庫化されて手軽に読めるようになったのも嬉しい。気軽に歴史小説を楽しみたい向きには、本当にお勧めできる一冊だ。
2026年08月18日
江戸時代の裁判劇を扱った歴史小説ということで、興味を持って手に取りました。宝暦という時代背景の中で、美濃国からやってきた一行が江戸で起こす直訴事件——その緊迫感のある展開に、一気に引き込まれてしまいました。 著者の筆力が素晴らしく、当時の町の雰囲気や人物たちの葛藤がありありと浮かんできます。特に公事宿を舞台にした人間模様は、現代を生きる自営業者としてもリアルに感じられる部分が多くありました。権力と庶民の関係性、正義と現実のズレ——こうした普遍的なテーマが、歴史という枠を超えて心に響きます。 登場人物たちが何のために、どういった信念で行動するのか。その動機の複雑さが丁寧に描き出されているところが、単なる時代冒険小説に終わらない深みを生み出しています。歴史を学ぶというより、人間ドラマとして楽しめる一冊。気軽に読み始めましたが、気付けば徹夜してしまいました。このような充実した読書時間をくれた作品に、感謝しています。
2026年08月11日
102歳の佐藤愛子さんのインタビュー集ということで、どんな話が聞けるのか興味を持って手に取りました。さすが長く執筆活動をされてきた方だけあって、ぼけかけているという自分の状態に対する見方も実に鋭くておもしろい。励ましなんてナンセンスだという切り口は、年を重ねた人ならではの達観ぶりが感じられます。 ただ、途中から娘さんと孫さんの証言に切り替わるんですが、ここからの構成が少し散漫な印象を受けてしまいました。本人のインタビューで培った緊張感が薄れるというか、読んでいて「ああ、そうですか」という感じで物足りなさが残ってしまう。もう少し本人の言葉が続いてくれたら、という欲求が拭えません。 とはいえ、高齢になっても書く責任感を貫く姿勢だとか、人生の後半戦での生き方を考えるきっかけにはなります。気軽に読める内容ですし、自営業で忙しい身にはちょうどいい分量でした。可もなく不可もなく、といった感じでしょうか。
2026年08月10日
日記という形式だからこそ味わえる、あの独特の魅力を改めて感じた。昭和40年代の富士山荘での日常が、さらりと、けれど確かに綴られている。 泰淳との共生の中で、妻として過ごした時間の記録。執筆や講演に追われる夫の傍らで、彼女は四季の移ろいを見つめ、時には愛犬の死という悲しみと向き合っている。こうした出来事ひとつひとつが、ありふれた日常の中に沈潜していく様子が素晴らしい。派手な出来事よりも、何気ない会話や観察が心に残る。 特に良かったのは、大岡昇平夫妻との交流の場面。知識人たちの交流が、気取りなく、生き生きと再現されている。また、富士山の風景描写も秀逸で、その季節季節の色彩が目に浮かぶようだ。 中巻ということで、全体の流れをより深く味わい始める地点だと感じた。こうした日記の世界にどっぷり浸かるのは、現代のせわしない日々から一歩引いて、人生の本質的な時間とは何かを考えさせてくれる。気軽に、気ままに開いて読むのが、こういう作品の最高の楽しみ方だと思う。
2026年07月27日
子どもの教育について、妻とよく意見が食い違う。どうしたら効果的に学力を伸ばせるのか、その答えを求めて手に取ったのがこの一冊だ。 経済学の視点から教育の問題を分析するというアプローチが新鮮だった。塾の効果、家庭学習の重要性、親の関与がどの程度影響するのか——こうした疑問に対して、科学的なデータに基づいた説明が展開される。直感や経験則ではなく、実証研究による「本当に効く」方法が示されているところが何より説得力がある。 ハンディ版ということで読みやすく、通勤時間や休憩時間でも気軽に進められた。経済学の専門知識がなくても理解できる程度に平易に書かれているのは助かる。 ただ、日本の教育現場に完全に当てはまらない部分もあるかもしれないと感じた。それでも、教育に投資する前に一度は読んでおく価値がある本だと思う。自分たちの教育戦略を見直すいい機会になった。
2026年07月25日
直木賞受賞作ということで手に取ってみたが、これが思いの外、良い作品だった。大正から昭和へと時代が移ろうなか、上野のカフェーで働く女性たちの人生を描いた作品である。 何が素晴らしいかといえば、歴史の教科書には決して載らない、市井の女性たちの生き方がこんなに愛おしく、そして力強く描かれていることだ。「女給」という職業を通じて、当時の社会、時代の空気まで伝わってくる。タイ子、セイ、美登里、園子——それぞれ異なる背景を持つ彼女たちが、互いに支え合い、時には突っかかりながらも、懸命に日々を重ねていく。その様子が自然で、ありありと目に浮かぶ。 自営業をして五十年近く、いろいろな人間関係を見てきた身からすると、この作品の人物描写は本当に見事だと感じる。誰もが何らかの葛藤や悩みを抱えながら、それでも前に進もうとしている。その健気さが胸に響く。 百年前の物語とはいえ、決して遠い昨日の話ではなく、今を生きる私たちにも通じるものがある。気軽に読める作風ながら、深い思考を促す——そういう読書の喜びを味わわせてくれた一冊だ。
2026年06月28日
シリーズ7巻目とのこと。これまでの流れを追いながら読むのが楽しいシリーズだけに、今回も期待通りの面白さでした。 何度も人生をやり直すという設定の面白さはそのままに、今回は外交戦という新しい舞台が加わってきた印象。歴史知識を活かしながら不幸な歴史を変えていくというコンセプトも、気軽に読める娯楽小説としてはうまく機能しています。主人公の「家族第一主義」というキャラクターも一貫していて、読み心地がいい。 シリーズ累計10万部というのも納得できるほどの安定感ですね。個人的には、複雑な歴史背景を説明しすぎないさじ加減が好きです。気張らず、休日の午後にコーヒーを飲みながら読むのにぴったりな一冊。 書き下ろし番外編も含まれているので、ボリュームとしても満足度が高い。シリーズファンならはずせない一冊だと思います。次巻も追いかけたくなりました。
2026年06月27日
犬との別れは、多くの人にとって人生の大きな区切りだと思う。この本を手に取ったのは、SNSで見かけた温かい言葉に引き寄せられたからだ。 ダックスフンドのグミと柴犬の銀次郎との日々を描いたエッセイなのだが、単なるペット本ではない。老いていく自分たちの体、変わっていく暮らしの中で、二匹とどう向き合ったかが静かに綴られている。自営業で長年現役を続けてきた身としては、衰えを受け入れながらも歩み続けることの大切さが胸に響いた。 何度も「大好きだよ」と繰り返すタイトルに、著者の覚悟と愛情が詰まっているのを感じる。写真やイラストも効果的で、文字だけでは伝わりきらない温もりがある。読んでいて不意に目がうるっときてしまった。 犬と暮らしたことのある人はもちろん、失ったものとどう付き合うかを考える誰もが、このページをめくる価値があると思う。気軽に手に取れるのに、深く考えさせてくれる。そういう本って、本当に好きだ。
2026年06月24日
このシリーズの続編が出ていると知って、さっそく手に取ってみました。前作のテンポの良さが好きだったので、期待値も高かったのですが、今回もしっかり期待を裏切りませんね。 「歩き回る鎧兜」という一見ばかばかしい題材なんですけど、そこが実に楽しい。堅い設定で真面目に展開させつつも、ところどころにクスッと笑える場面が散りばめられていて、仕事の合間に気軽に読み進められました。自営業をしていると、どうしても日々の仕事は気が重くなることもありますが、こういった軽妙なエンタメ小説は心の栄養剤になりますね。 登場人物たちのやり取りもいいテンポで、各エピソードに適度な温度感が保たれている。怪奇現象という素材を扱いながらも、説教的にならず、人情味のある着地点を見つけているところが本書の魅力だと思います。文庫本だから持ち歩きやすいのもいい。 もう第3巻があれば、迷わず読むと思います。このままのクオリティを保ってくれればいいなあ。
2026年06月18日
自営業をしていると、つい仕事に追われて日々のことを後回しにしてしまう。でも最近、教育現場の工夫の話を聞く機会が増えて、ふと興味が湧いてこの本を手にしました。 正直なところ、デザインツールの実用書なんて自分には無縁だと思っていたんです。ところがページを開いてみると、Canvaという無料ツールを使って、こんなに簡単にプロっぽいデザインが作れるのかと驚きました。QRコードからテンプレートがダウンロードできるという親切さもいい。 何より素晴らしいのは、掲載されているデザインがどれも本当にセンスがいいということ。子どもたちが思わず手に取りたくなるような華やかさと、教室の雰囲気を損なわない洗練さが両立している。自分の子どもの頃、こんな工夫がされた教室があったら、もっと学校が好きになったかもな、と思ったほどです。 教員向けの本とはいえ、デザインやツールの活用に興味がある人なら誰でも参考になる一冊。忙しい中でも工夫次第で素敵な環境を作ることの大切さが伝わってきました。
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