静かな読書の本棚
ファイア・ドーム(上)

ファイア・ドーム(上)

辻村 深月 小学館 2026年6月5日

感想

辻村深月の新作ということで手に取った一冊です。25年前の殺人事件が町に落とした影が、現在の事件へとつながっていくという設定。噂という火が人々を焼き続ける、その恐ろしさがじわじわと伝わってくるんですね。 事件そのものの謎解きというより、社会的な圧力や集団心理、そして時間が癒やすはずの傷がいかに深く残るかという人間ドラマに重点が置かれている印象です。容疑者とされた者、被害者の遺族、そして何の関係もない人々が互いに疑い、傷つけ合う構図は、読んでいて非常に考えさせられます。 上巻ということで、まだ全容が見えていませんが、複数の視点から事件が描かれており、各章を読み進めるたびに「あ、そういうことか」という小さな発見が積み重なります。自営業で人間関係の複雑さには目が肥えているつもりでしたが、この作品のように普通の人間が普通に悪意なく誰かを傷つけてしまう、その過程の描き方は秀逸だと感じました。下巻が気になる。良い意味で、自分たちの町で起こっているかもしれない話として読めます。

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