直人の本棚
感想

話題の北欧小説ということで手に取ってみたが、期待以上の収穫があった。ヘルシンキの小さな食堂を舞台にした、いかにもフィンランド的な静寂と温かさに満ちた作品だ。 登場人物たちは確かに「訳あり」なのだが、その設定が押し付けがましくなく、さりげなく織り込まれている。日々のちょっとした会話や食事のシーン一つひとつに、人生を丁寧に歩む姿勢が透けて見える。仕事で忙しい毎日を過ごしていると、ついこうした「何もしない時間」の大切さを忘れてしまいがちだが、この本を読むとその価値を思い出させてくれる。 決して派手ではない物語だが、一ページ一ページがしみじみと心に沁みわたる感覚は、やはり傑作の証だろう。文庫版で手軽に読めるのも良い。人生の折り返しを過ぎた身としては、こういう穏やかで本質的な作品に出会えることの幸福を感じた。

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