直人の本棚
ジョギング妻のしずく

ジョギング妻のしずく

草凪優 竹書房 2018年4月1日

感想

話題作ということで手に取った一冊だが、予想外の面白さに引き込まれてしまった。中年男性の再出発という普遍的なテーマを、ここまで大胆に、そしてユーモアを交えて描いた作品は珍しい。 主人公・幸四郎は妻との不仲で東京に単身赴任した、いかにも地味そうなサラリーマン。その彼がジョギングをきっかけに人生が変わっていく。この設定だけで既に興味をそそられるのだが、物語の進め方が実に巧妙だ。単なるエロス小説に陥らず、男としての自信の喪失と回復というテーマを丁寧に描きながら、読み手を引き込んでいく。 58歳の身としては、主人公の年代と重なる部分があり、より一層感情移入できた。人生の折り返しで自分を見つめ直す機会は誰にでもあるもの。この作品はそうした中年男性の心理を、深刻に陥らず、むしろ希望と可能性を感じさせる形で表現している点が素晴らしい。 軽妙な筆致でありながら、人間の根源的な欲求や孤独感に真摯に向き合う。竹書房らしい独特の魅力を存分に味わえた一冊である。同世代の男性にこそ、ぜひ読んでいただきたい。

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