石井の本棚
ヤクザが消えた裏社会

ヤクザが消えた裏社会

廣末 登 筑摩書房 2026年2月9日

感想

社会問題として「暴力団排除」と「更生支援」のジレンマを扱う興味深いテーマだったので、期待を持って手に取りました。ただ、実際に読んでみると、論じられている問題設定そのものに疑問を感じずにはいられませんでした。 著者の主張は「暴力団を排除しすぎると、裏社会がより悪質になる」というものですが、この因果関係の実証が十分ではないように思います。統計データや具体的事例の積み重ねというより、むしろ著者の推測や仮定に基づいた議論が多く、エンジニア気質の私としては「証拠は?」と問いたくなる箇所が頻出します。 また、「更生を望んでも社会が許さない」という問題提起は妥当ですが、では具体的にどうすべきかという処方箋が曖昧です。新書というフォーマットの限界かもしれませんが、問題を指摘することで終わってしまう印象が拭えません。 セーフティネットの重要性は理解しますが、本書を読んで「なるほど」と腑に落ちるというより、「本当にそうだろうか」と疑問を抱く方が強かったのが正直なところです。もう少し説得力のある論拠があれば、違う評価だったと思います。