石井の本棚
夜は短し歩けよ乙女 愛蔵版

夜は短し歩けよ乙女 愛蔵版

森見 登美彦 KADOKAWA 2026年2月26日

感想

森見登美彦の傑作を愛蔵版で改めて手に取る喜びは想像以上だった。エンジニアという理系の職業柄、文学作品は敬遠しがちだったのだが、この作品の緻密で論理的なプロット構成に引き込まれたことがきっかけだった。 20年前の初版からこれほどの時を経ても、京都という舞台設定と登場人物たちの会話の生き生きとした描写は色褪せていない。むしろ本編の緊密さが金箔押しと函入りという装丁で一層引き立つ。時間軸の複雑な配置、複数視点の巧みな交錯—これらの構造的な美しさに、思わず技術者的な観点からも感動を覚えた。 物語そのものの楽しさはもちろんだが、この永久保存版は本として所有する喜びが大きい。長く手元に置いて、何度も紐解きたくなる魅力がある。価値ある装丁で、ファンのために用意された配慮が心地よい。手にするたび、阿部寛の映画化版も合わせて思い出せるのは美しい相乗効果だ。