石井の本棚
戦中派 死の淵に立たされた青春とその後

戦中派 死の淵に立たされた青春とその後

前田 啓介 講談社 2025年10月23日

感想

戦後日本を支えた世代の精神史を、これほどまでに誠実に掘り下げた著作は稀だと思う。1920年代生まれの若者たちがいかに死と向き合い、その経験を背負いながら高度経済成長期を生きたのか——その問いへの向き合い方が見事だ。 エンジニアとして現在を生きる私たちは、つい実用的な知識ばかりを求めがちだが、この本は異なる視座を提供してくれる。吉田満や水木しげるといった著名人だけでなく、名もなき市井の人々の証言を交えながら、「なぜ生きるのか」という根源的な問いを浮き彫りにしていく構成が素晴らしい。 特に印象深いのは、死者という他者を内に抱えながら生き続けることの重さを描いた部分だ。生存者の負い目、そして生きることへの執着——それが戦後の経済成長という現象と深く結びついていたという洞察は、現在の私たちが忘れかけている何かを思い出させてくれる。新書というコンパクトなフォーマットながら、歴史的深度と人間的温度を両立させた傑作である。

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