石井の本棚
感想

高名な科学者による壮大なビッグバン史であると期待して手に取りました。138億年の宇宙史から意識の誕生まで、というコンセプトは素晴らしく、その野心的な試みは十分に評価できます。 ただ残念ながら、執行の面で課題を感じずにはいられませんでした。各分野の知見を統合するという目標は理想的ですが、実際には個別の説明が浅く、かつ唐突に次のテーマに移行してしまう印象が拭えません。エンジニアの視点からいえば、複数のシステムを統合する際は、各要素の深さと全体の接続性のバランスが重要です。本書はどちらも中途半端になっている気がします。 また、「私」という意識へのアプローチが、最後まで明確に結実しないのも物足りない点です。序盤の約束が、後半に十分に応えられていません。リチャード・ドーキンスの推薦文は信頼できるだけに、なおさら期待値とのギャップが大きくなってしまいました。 学際的なアプローチの重要性は理解しますが、もう一段階の思考の深化か、論の圧縮が必要だったように思います。