西国立志編
講談社 | 1981/01/01
みんなの感想
サムスイルズの『自助論』が明治日本でどのように受け取られたのか、その記録を辿ってみたいという思いから手に取った一冊だ。 正直なところ、古典の翻訳書を読む際には常に緊張を伴うものだが、中村正直による『西国立志編』は想像以上に読みやすく、かつ示唆に富んでいた。「天は自ら助くる者を助く」という思想的核は、今から150年以上前の翻訳にもかかわらず、現代のフリーランスである私の心にも深く響く。自分の人生を自分で切り開くしかない立場にいると、他人や環境のせいにする思考の誘惑は常に存在する。この古典はそうした甘えを厳しく戒めてくれる。 300余人の成功立志談という構成も秀逸で、様々な時代・立場の人物の事例を通じ、普遍的な自助の精神を学べる。福沢諭吉の『学問のすゝめ』と並ぶ啓蒙書というのも納得できる説得力がある。時を経ても価値は色褪せない、そうした古典の力を改めて実感させられた。
明治時代の啓蒙書とのことで、正直なところ難しい内容ではないかと少し躊躇していたのですが、思い切って手に取ってみて良かったです。 「天は自ら助くる者を助く」という言葉が印象的で、依存や他力本願ではなく、まず自分が行動することの大切さが繰り返し説かれています。300年以上前のヨーロッパの成功者たちの事例が紹介されているのですが、時代は違えど、人間が困難を乗り越えるために必要な思考や行動は普遍的なのだと気づかされました。 主婦として毎日を過ごしていると、ついつい自分の可能性を狭く考えてしまう傾向があるのですが、この本を読むと「自分にもできることがあるのでは」という前向きな気持ちが湧いてきます。文体は古いですし、事例によっては現代にそぐわないものもありますが、その点を差し引いても、人生の転機や迷いの時に勇気をくれる一冊だと感じました。 福沢諭吉の『学問のすゝめ』と並ぶ名著というのも納得できます。
明治の啓蒙書ということで、日本の近代化の歴史を学びたいと思って手に取りました。福沢諭吉と並ぶ重要な著作だというので、慎重に選んだ一冊です。 ただ、実際に読んでみると、正直なところ現代の私たちにはやや距離がある内容だと感じました。原著が19世紀のスコットランドの著作で、さらに明治時代の日本人による翻訳ということで、どうしても時代を重ねた言語や思想が介在しています。自助精神や独立心といった基本的なメッセージは理解できるのですが、具体的な事例が遠すぎて、現代生活との結びつきが見えにくいのです。 また、登場する300余人の成功談も、古い時代の欧米の著名人ばかりで、高齢の私でさえ知らない人物ばかり。参考になりづらく、読むのに相応の忍耐力を要しました。 歴史的価値は十分にありますが、啓発を求めて読むには工夫が必要な一冊だと思います。明治文化の研究や思想史に興味のある方には向いているでしょう。
明治時代の啓蒙書がこんなに現代的だとは思いませんでした。『西国立志編』は単なる歴史的遺産ではなく、今を生きる私たちにもじわじわと響く思想の書です。 「天は自ら助くる者を助く」という冒頭の言葉が全てを象徴しています。自助精神、独立独行の大切さが300余人の成功談を通じて語られるのですが、決して押し付けがましくない。むしろ、当時の若者たちが抱いていた不安と希望が、現在の私たちの迷いと通じるものがあると感じました。 新しい時代への移行期に書かれた本だからこそ、変化への向き合い方が参考になります。単に成功ノウハウ本ではなく、人間がいかに主体的に生きるべきかを問う深い思想がある。中村正直の翻訳も素晴らしく、原著の意図を大切にしながらも日本の文脈に落とし込んでいるのが分かります。 大学院での研究活動を続ける自分にとって、くじけそうになった時に読み返したい一冊になりました。福沢諭吉の『学問のすゝめ』との比較も面白そうです。