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号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた

江國香織 新潮社 2006年6月28日

感想

直木賞受賞作という高い評価に惹かれて手にした一冊だが、正直なところ期待と現実のズレが大きかった。 短篇集とはいえ、恋愛をめぐる感情表現に終始するばかりで、人生経験の厚みや思想的な深さが感じられない。53年も生きていると、感情の揺らぎよりも、そこからどう向き合い、何を学ぶのか、という部分に関心が向く。本書の随所に散見される繊細さは認めるが、それが共感に結びつくまでには至らなかった。 また、短篇ごとの質にばらつきがあるのも難点。傑作と凡作の落差が大きく、全体として統一感に欠ける。装丁や帯文の仕掛けも確かに魅力的だが、それが本の内実を補完するほどではない。 年若い読者には心を打つ作品なのかもしれない。だが、人文書を主軸に読んできた身からすると、文学的な価値よりも「売れている理由」が気になってしまう。もう少し骨太な構想があれば、別の評価もあったのだが。