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アラビアン・ナイト(9)

アラビアン・ナイト(9)

前嶋信次 平凡社 1988年6月1日

感想

平凡社版『アラビアン・ナイト』全9巻の最終巻にたどり着いた。長年のプロジェクトの完結は、ある種の充足感と同時に、深い余韻を残すものだ。 この第9巻では、物語が複数の糸を紡ぎながら次々と展開していく。シェエラザードによって語られてきた無数の話が、単なる娯楽の枠を超えて、人間の本質や運命に関わる深い問題へと収束していく過程が秀逸である。翻訳も相変わらず丁寧で、古典の格調を保ちつつも現代的な読みやすさを備えている。 自営業という立場で、日々の実務から離れて古典に身を浸すとき、この作品のような多層構造を持つ物語の価値を改めて感じる。各エピソードが独立しながらも全体を形作っていく構造は、人生経験を重ねた今だからこそ、より深く理解できる。 ただし、最終巻であっても、その叙述の密度は若干、前巻と比べてペースが緩む箇所がある。完璧さを求める読者にとっては、わずかな物足りなさが残るかもしれない。しかし全体として、この長大な冒険の締めくくりとしては十分に価値のある一冊である。

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