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ナイン・ストーリーズ

ナイン・ストーリーズ

J・D・サリンジャー 新潮社 1974年12月24日

感想

サリンジャーの短編集を手に取るのは久しぶりだ。「ライ麦畑」より完成度が高いという帯の惹き文句に引き込まれて、つい購入してしまった。 読み始めてすぐに、この短編集の魅力に気付く。各篇で描かれるのは、一見平凡な日常の中に潜む違和感や心の奥底の痛みだ。特に表題作の「バナナフィッシュにうってつけの日」は、表面的な優雅さと内面の葛藤のズレが秀逸である。家族間の微妙な感情のやり取りが淡々と描かれながら、読者には重い余韻が残される。 仕事で人間関係に疲れた時期だったせいか、登場人物たちの複雑な心情がことさら沁みた。サリンジャーのように深く掘り下げながらも、ユーモアや風刺を忘れない筆致は、人生経験を積んだ今だからこそ味わい深い。短編という形式も絶妙で、各篇を一気読みできる気軽さがありながら、その後もしばらく考えさせられる。 働き盛りの管理職こそ読むべき一冊だと思う。人間不信に陥りかけた心に、ちょうどいい刺激を与えてくれた。

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