阿部の本棚
菊池伝説殺人事件

菊池伝説殺人事件

内田 康夫 KADOKAWA 1991年2月7日

感想

新社会人になって読む時間が限られるようになったせいか、質の高いミステリーにはより一層惹かれるようになった。この作品はまさにそうした期待を満たしてくれた一冊だ。 浅見光彦シリーズは初めてだったのだが、フリーライターというプロフェッショナルな主人公設定が、社会人になった自分の感覚とどこか重なる部分があった。熊本県菊池市という地方の土地と、菊池一族という格式高い家系が織り成す背景設定は、単なる舞台装置ではなく、事件そのものに深く根ざした重層的な謎を生み出している。 何より素晴らしいのは、推理の進め方がロジカルでありながらも、人間臭さを失っていない点だ。容疑者の恋人という一見単純な状況設定から、複雑に絡み合った人間関係へとストーリーが展開していく様は実に巧妙。一気読みしてしまった。 評価の高さも納得できた。これからシリーズを遡って読んでみたいと思わせる、魅力的なミステリーである。

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