しんの本棚
感想

書道史の重要な資料として高い評価を受けているということで手に取ってみたのだが、正直なところ期待と現実のギャップに少し戸惑ってしまった。 前田黙鳳という明治の碩学による『五体字書』の復刻版とあって、漢字の各書体を体系的に学べる実用的な教科書として期待していたのだ。実際、金石学や書法学の研究家としての彼の業績は確かに高く評価されているようだし、中村梧竹や日下部鳴鶴といった著名な書家との交流からもその専門性の高さが伺える。 しかし、本そのものとしては非常に専門的で、門外漢である我々一般の読者にはアクセスしづらい。現代の新社会人が書道の基礎を学びたいと思って手にする本ではなく、むしろ既に相応の知識を持つ研究者や書道愛好家向けのリファレンスという印象だ。復刻版としての意義は認めるものの、読みやすさや現代への適用可能性という観点では改善の余地があると感じた。

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