本屋大賞ノミネートという帯につられて手に取ったのが正解でした。 ニュースで見かけるような事件を題材にしながら、その背景にある人間関係や心理を丁寧に掘り下げていく構成が面白い。エンジニアという職業柄、複雑なシステムを理解するのは得意なんですが、この小説もまさに人間関係という「複雑系」をすごく上手く描いているなって感じました。 20年前の記憶と現在が交錯する構成も効果的で、「あの時点でこう判断していたら…」という後悔や疑問がリアルに伝わってきます。金銭問題が絡むことで人がどう変わっていくのか、その過程が冷徹に、でも決して冷たくなく描かれているのが印象的。 上巻ということで続きが気になるのですが、まずはここまでの流れだけでも充分に満足度の高い読み応えです。重めのテーマですが、想像以上にページが進むので週末の読書にもぴったり。下巻も早く読みたい。
最近登録された他の本の感想
2026年07月25日
川崎鷹也のエッセイ、予想以上に引き込まれました。正直なところ、アーティストの自伝本って少し敷居が高いイメージがあったんですが、この本は違いました。 本人が書き下ろしたというだけあって、とても素直な語り口が心地よい。なぜあんなに人の心を揺さぶる歌声が出るのか、その秘密が垣間見える感じがします。挫折や努力の話は、エンジニアの私にとってもすごく共感できる部分が多かったです。地道に技術を磨くって、ジャンルは違えど本質的には同じなんだなって改めて思わされました。 音楽の技法についても、難しすぎず、でも本質的な部分は丁寧に説明されているから、音楽知識がなくても楽しめます。短編みたいなのも挟まってあるので、さくさく読み進められました。 一気読みして、その後彼の曲を聴き直したくなるような、そういう素敵な一冊。もっと早く読めばよかったなって思います。
2026年07月23日
シリーズを追いかけ続けてようやく14巻にたどり着きました。いや、相変わらず面白い。これ、本当に何度読んでも飽きません。 今巻は主人公・莉奈が新しい国に到着して、またもや食べ物で周囲を魅了していく話なんですけど、焼肉パーティーから始まる外交戦は思わず笑ってしまいました。竜に乗ってきた女の子が城門前で焼き肉を焼く、この非常識さがもう最高。当然、王様も陥落するわけで。 エンジニアとしての仕事柄、論理的に構成された物語を読むことが多いんですが、このシリーズって実は緻密に計算されているんですよ。一見ほのぼのしているように見えて、各キャラクターの思惑がちゃんと絡み合ってるし、世界観の設定も無理がない。その上で、食べ物の描写から伝わる温かさと親近感が素晴らしい。 ストレスフルな日常から逃避したいときに最適です。ご飯を食べながら読むと、さらに沼にハマります。次巻が待ち遠しい。
2026年07月09日
仕事でコードと向き合う毎日だからこそ、こういう優しい世界観にすっと入り込めるんだと思う。ホテルうらうらという架空の場所が、読んでいて本当に存在する場所みたいに感じられて、ここに泊まりに行きたいなって何度も思った。 編集者、会社員、母親——違う立場の三人が、それぞれの人生の悩みを抱えてこのホテルにやってくる。その描き方がすごく丁寧で、押し付けがましくない。占いができるオーナーが答えを教えてくれるわけじゃなくて、海を眺めたり、素の自分になったりする中で、ゆっくりと心が変わっていく感じなんだよね。 潮が満ちたり引いたりするみたいに、人生にも流れがあって、時には待つしかない時間があるんだっていうメッセージがさりげなく伝わってくる。エンジニア的には、こういう「自然な流れに身を任せる」という発想は日頃とは正反対だから、余計に響いたのかもしれない。疲れた心をリセットしたいときに読むのに最適な一冊です。
2026年06月20日
成瀬シリーズの続編ということで期待して読みました。正直、前作を読んでからしばらく経っていたので、成瀬あかりというキャラクターをちゃんと覚えているか不安だったんですが、すぐに彼女の世界に引き込まれました。 この作品の面白さは、成瀬という軸がありながらも、毎話異なる登場人物たちの視点を通じて物語が広がっていくところですね。エンジニアとして論理的に考える癖がある私も、こういう多角的なストーリー展開には心がときめきます。小学生ファンの話、父親の葛藤、女子大生のキャリアの悩み...どれもが成瀬との交差で新しい色が出ていて、短編の集合というより一つの大きな物語として成立しているのが素晴らしい。 ただ一つ、終盤の展開にはちょっと驚きました。成瀬の行動の真意が最後まで完全には明かされない部分があって、それが謎のままというのは...賛否分かれるかもしれません。私個人としては、その曖昧さも含めて成瀬らしいなと感じたので、気に入っています。気軽に読める長さながら、読み応えのある良い本でした。
2026年06月15日
シリーズものの途中巻ということもあって、既に世界観に入り込んでいる読者向けという感じが強い作品でした。第三部の6巻目ということで、キャラクターたちの成長や関係性は十分に構築されているんでしょう。 水属性の魔法使いの「気ままな冒険」というコンセプトは悪くないんですが、今巻では特に新しい魅力を感じられなかったというのが正直なところ。東方諸国編という舞台設定は面白そうなのに、展開としては予想の範囲内で、読んでいて「ああ、次はこうなるんだろうな」と想像できてしまう部分が多かったです。 魔法戦闘シーンは派手で迫力があるんでしょうけど、仕事の合間に気軽に読むには少し密度が濃すぎるような。アニメ化されているということで、そちらを観た方が映像の迫力で楽しめるかもしれません。 シリーズを追い続けている人にとってはストーリーの進展として必要な一冊なんだと思いますが、個人的には話の節目で一息つきたい気分。累計120万部という実績は納得できますが、私のようなカジュアルな読者には、もう少し立ち止まって考えさせてくれるような要素があれば良かったなと感じました。
2026年06月14日
警察内部の部署を舞台にした珍しい設定だったので、興味を持って手に取りました。落とし物から事件が解き明かされていくという奇想天外なプロット、実は結構好物なんですよね。 ただ正直なところ、可もなく不可もなく、という感じでした。超能力的な設定は面白いんですけど、それがストーリーにどう活きているのかが少し曖昧に感じられて。主人公の遠子さんが独自捜査を始める動機もいまいち腑に落ちませんでした。 それでも読んでいて退屈することはなく、各エピソードは程よいテンポで進みます。会計課という地味な部署が舞台というのも、実務的な視点があってリアリティがありました。エンジニアとして、細かい設定や整合性に目が行きがちなんですが、そこはまあ及第点かな。 軽くエンタメとして読むには十分で、週末にさっと読み終わるぐらいの気軽さが良かったです。ミステリーとしてはもう一押し欲しかったけど、著者初の警察ものということなので、次作に期待してみたいです。
2026年06月13日
下巻を一気読みしてしまいました。上巻で張られた伏線が次々と回収されていく快感、そして何より人間の複雑な感情の描き方が秀逸です。 倉持という男がこんなに厄介な存在になるとは。田島の気持ちがぐるぐると揺らぐ様子は、本当にもどかしくて。エンジニアの仕事で論理的に物事を考える日常とは違う、感情のモヤモヤした部分を見つめさせられるような作品ですね。 人間は誰もが心の中に「殺意」のようなものを持っているはず。それを自覚するか無視するか、向き合うか目を背けるか——その選択が人生を左右するんだなと感じました。「殺人の門」というタイトルは伊達じゃない。ページをめくる手が止まりません。 完結ということで、後味がスッキリというわけではないのが、この本の強さだと思います。もやもやしたまま物語は終わるけど、それが人生そのものなのかもしれないな、と。個人的には好きなタイプの小説です。
2026年06月12日
話題のミステリということで、仕事の息抜きに読んでみました。豪華な館を舞台にした古典的な本格ミステリで、そこは確かに丁寧に構成されているな、という印象。560ページ一気読みできるほどの吸引力があるというのも納得できます。 ただ正直なところ、これまでミステリをそこまで読んでこなかった身としては、業界人の絶賛の声ほどの衝撃は受けませんでした。トリックや仕掛けは見事なんでしょうが、なんというか既視感のようなものが拭えなくて。登場人物も立体的ですが、どうしても「ミステリの登場人物」という感じが強くて、人物への感情移入がイマイチ。 エンジニアの仕事で謎解きや論理的思考は日常茶飯事なので、その視点では割と早めにある程度の構図が見えてしまったというのもあるかもしれません。それでもエンタメとして、週末にまったり楽しむには良い一冊。深い思考を求めない気軽な読書に向いていると思います。
2026年06月08日
定年を迎えた夫婦の関係性が、ある青年の出現によってぐらぐらと揺らいでいく——こんなシンプルながら深刻なテーマを、こんなにも読みやすく、それでいて心に響く話に仕上げるって本当に見事だなと思いました。 エンジニアとして仕事一筋で生きてきた身だからか、定年後のアイデンティティーの喪失感や夫婦間の微妙な空気感がすごくリアルに感じられたんです。普通なら重くなりそうなテーマなのに、ページをめくる手が止まりません。登場人物たちの行動一つひとつに「あ、この人たちもこういう判断をしてしまうよね」って共感できるところが多くて。 何より素敵だったのは、物語が「正解」を押し付けないところ。人間関係の複雑さや、人生の予期せぬ転機の中で、みんなが少しずつ戸惑いながら歩んでいく様子が、とても人間らしくて温かい。 気軽に読める文庫本のサイズ感も良くて、通勤電車での読書に最適でした。確実に手元に置いておきたい一冊です。
2026年06月07日
戦闘機パイロットとテレビディレクターという、一見すると絶対に交わらないような二人が出会うところから始まるこの物語。タイトルだけで引き込まれて手に取ってみました。 読み始めると、エンジニアの仕事で日々ロジカルに物事を考えている脳が、ちょうどいい感じでほどけていくような感覚。パイロットのストイックさとディレクターの創造的な視点が衝突し、次第に引き合われていく過程が本当に丁寧に描かれています。二人の会話がテンポよく、くすくす笑ってしまう場面も多かった。 個人的には、職業の描写がリアルだなと感じました。自分も仕事の現場を知る人間なので、著者がこれらの世界をちゃんと調べて書いてるんだろうなというのが伝わってくる。それが物語全体の説得力になってますね。 恋愛小説としても、エンタテイメント作品としても、バランスよくまとまっていて、気軽に楽しめるけど読み応えもある。週末に一気読みする快感、って久しぶりに味わった気がします。
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