直人の本棚
ハーメルンの死の舞踏

ハーメルンの死の舞踏

ミヒャエル・エンデ / 佐藤真理子 朝日新聞出版 1993年5月1日

感想

話題の書籍ということで手に取った一冊だが、予想以上の深さに引き込まれた。ハーメルンの笛吹き男という古い伝説を、現代的な視点で読み直すとはどういうことか。その仕掛けがじつに秀逸である。 エンデは表面的な民話の解釈に留まらず、中世の都市国家の権力構造、そして金銭というシステムの本質に切り込んでいく。「大王ねずみ」が金貨をひり出すという奇想天外な設定は、一見ファンタジーめかしているが、じつは現代社会における通貨制度の不可思議さを象徴しているのだ。この読み解き方には唸らされた。 58年生きてきた身からすると、経済システムについてこれほど本質的に問い直す思想書は珍しい。難解さもなく、むしろ不思議な物語としてスルスルと読める。それでいて読み終わった後には、お金というものの虚実について深く考えさせられる。こうした知的興奮は、年を重ねても決して衰えるものではないことを改めて感じた。現代人必読の一冊だと思う。

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