直人の本棚
感想

直木賞受賞作ということで手に取った一冊だが、これは素晴らしい。競馬小説というジャンルを超えた、人間ドラマとしての深さに引き込まれた。 装蹄師という職業にスポットを当てた視点がまず新鮮だ。馬の蹄に触れることで、その馬の本質を感じ取る主人公の感性。そして、気性の荒い一頭の馬と、人生に挫折した騎手との関係性が、丁寧に、説得力を持って描かれていく。 北海道の牧場を舞台にした風景描写も秀逸で、寒冷地の景観と登場人物たちの心情がみごとに重ねられている。中年になってから読むと、人生の後半戦で本来の力を取り戻そうとする登場人物たちの姿勢に、自分自身の人生経験と重ね合わせて考えさせられるところがある。 馬という生き物を通じて、人間の可能性と限界、そして再生について問いかけてくる作品。会社員生活も長くなってきた年代だからこそ、こうした物語に心が打たれるのだろう。文句なしの傑作だ。

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