直人の本棚
転生! 太宰治 転生して、すみません

転生! 太宰治 転生して、すみません

佐藤 友哉 / 篠月 しのぶ 星海社 2018年9月16日

感想

話題の企画もの、ということで手に取ってみた一冊だ。太宰治が現代に転生するという奇想天外な設定には正直、興味をひかれた。 ただ読んでいて感じたのは、この作品の遊び心と真摯さのバランスが上手くいっていないという点だ。章立てを見ると、メイドカフェやカプセルホテルといった現代の風俗描写と、太宰本人の根本的な苦悩との混在を狙っているようにも見える。だが実際には、軽いノリで現代ネタを消費する側面が強く、太宰という人物の深さが活かしきれていない。 文豪を題材にするならば、もっと思想的な衝突や葛藤を掘り下げる覚悟があるか、あるいは完全にコメディに振り切るか、どちらかであるべきではないか。中途半端に両者を行き来する感じが、読んでいて物足りない。 人文書や思想書に慣れた目で見ると、『人間失格』の著者の現代への問い掛けは、もっと根深く、もっと痛烈であってほしかった。企画としては面白いのに、深掘りが足りない、そんな印象が残る一冊である。

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