直人の本棚
恋するように旅をして

恋するように旅をして

角田 光代 講談社 2005年4月15日

感想

話題になっているということで手に取ってみた一冊。直木賞作家による旅のエッセイということで、期待を膨らませていたのだが、読み終わってみると可もなく不可もない、というのが正直な感想だ。 著者がタイやベトナム、モロッコといった異国を軽々と歩き回る様子は確かに興味深い。写真も豊富で、各地の風景や人物が生き生きと伝わってくる。ただ、全体を通して感じるのは、どこか散漫さが拭えないということ。旅の断片的なエピソードが次々と出てくるのだが、それらが有機的に繋がっているようには感じられず、退屈とは言わないまでも、深く心を揺さぶられることがない。 旅の自由さを表現しようとしたのだろうか、その結果として読み手も漂流させられている感がある。我々の世代としては、もう少し思考の深さや人生経験に裏打ちされた省察があってもよいのではないか、そう感じてしまう。旅のフォト・エッセイとしては及第点だが、文学として突き抜けたものには至っていない、というのが評価である。

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