三浦の本棚
天使のナイフ 新装版

天使のナイフ 新装版

薬丸岳 / 薬丸 岳 講談社 2021年8月12日

感想

少年犯罪を扱った小説というと、どうしても予定調和的な道徳的メッセージに収束してしまうものが多い。だからこそ、この作品がここまで高く評価され続けているのだろう。 桧山貴志という一人の父親の苦悩と怒りを軸に、法という社会システムの不完全性を突き付けてくる。娘の前で妻を奪われ、その犯人たちが法によって罰せられない―この設定だけで既に息が詰まるような緊張感が生まれている。その上で、物語は単純な復讐劇には陥らない。むしろ、登場人物たちが直面する「正義とは何か」という根本的な問いが、最後まで読者の心を揺さぶり続ける。 新装版ということもあり、初出時から現在までの間に積み重ねられた評価の重みを感じながら読むことになる。デビュー作とは思えぬ完成度。慎重に本を選ぶ私としても、これは確実に読む価値がある一冊だ。法律と倫理のはざまで葛藤する人間ドラマとして、極めて優れた傑作である。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ