はるとの本棚
ハーメルンの死の舞踏

ハーメルンの死の舞踏

ミヒャエル・エンデ / 佐藤真理子 朝日新聞出版 1993年5月1日

感想

エンデが古い伝説に現代的な視点を注入した秀作である。ハーメルンの笛吹き男という中世の民話を素材としながら、「金銭」という現代の黒魔術の本質に迫る試みは、人文系の読み手として興味深かった。 中世都市という舞台設定の中で、ねずみ退治という一見素朴なストーリーが、実は経済システムの歪みと権力構造の問題へと収斂していく構成は見事だ。支配者層が「大王ねずみ」をひそかにあがめ、金銭を生み出すメカニズムとして機能させている描写には、資本主義社会への鋭い批評精神が息づいている。 笛吹き男の出現が象徴する希望と解放の可能性、そしてそれが現実にもたらす結末の複雑さまで含めて、エンデの思想的な深さを感じさせる。児童文学の枠を超えた知的な仕掛けが随所に施されており、大人の読者こそが真の意味で味わえる作品だと言えるだろう。 フリーランスとして経済の本質的な問題を常に意識している身としても、この作品の問題提起は多くの示唆を与えてくれた。ぜひ多くの大人読者に手に取ってほしい一冊である。

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