斎藤の本棚
感想

話題になっていたこの作品、ようやく文庫化されたタイミングで手に取りました。著者の前作『三日間の幸福』の独特な世界観が好きだったので、期待値は高かったのですが、今作も期待を裏切りませんでした。 架空の記憶と現実が交錯する設定、そこから生まれる青年と少女の不思議な出会いと関係性が、とても切実に迫ってくる。「出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた恋」というキャッチコピーが全てを物語っていますね。何度も読み返したくなるような、儚くて、でもどこか温かみのあるストーリー構成です。 主人公・千尋の違和感や戸惑いが丁寧に描かれていて、読んでいる自分も彼と一緒に物事の真実へ近づいていく感覚が心地良い。文庫版という手軽さも相まって、この季節に読むのに最適な一冊だと思います。SFのような、ファンタジーのような、でも最後には深く胸に残る―そんな作品に出会えるのは、読書の喜びそのものです。

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