橋本 美月の本棚
感想

このところ書店でよく見かけるタイトルだったので、手に取ってみました。ハリネズミという地味で棘々しい存在が主人公というのも、なんだか惹かれるものがありました。 読んでみて驚いたのは、この小さな物語がこんなにも深く心に沁みるということです。誰かを招待したいのに、ハリが邪魔で踏み出せないハリネズミの揺らぎながらの勇気──それって、私たちの人間関係そのものじゃないですか。年を重ねると、つきあいって難しくなっていくものです。だからこそ、このハリネズミの葛藤が他人事とは思えません。 オランダの作家による作品というのも今風で、翻訳文学ならではの温かみと独特な空気感があります。シンプルな文体なのに、人間の根源的な不安や希望がしっかり描かれていて。子ども向けではなく、むしろ大人だからこそ感じられる味わいがあると思います。最後のページをめくった時の静かな余韻がいつまでも残っています。話題本として読む価値、十分にあります。