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時間と人間

時間と人間

村上陽一郎 東京大学出版会 1981年3月1日

感想

時間という抽象的な概念をここまで深く掘り下げた著作は珍しい。東大出版会らしい学術的な厳密さを保ちながらも、哲学的思考と実存的な問いが絶妙に絡み合っている。フリーランスとして自分の時間をどう使うかを日々考える身にとって、この本の議論は単なる理論にとどまらず、実生活の指針となった。 著者の時間観は決して一面的ではない。物理的時間と心理的時間、歴史的時間と個人的時間といった複数の層を丁寧に分析していく手法が見事だ。各章の論理展開も明快で、新書ではなく本格的な人文書としてのボリュームながら、読み疲れることなく最後まで引き込まれた。 ただし、実践的な応用という点ではやや物足りなさを感じる。時間論としての完成度は高いものの、具体的な人生設計にどう反映させるかについては、読者に委ねられている部分が大きい。それでもなお、時間について真摯に考えたい人にとっては必読の一冊。知的な満足感と内省の機会を同時に得られる、そんな良質な著作である。

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