映画化作品ということで、どうかなと思いながら手に取りました。前作の「アプリ婚連続殺人事件」の続編という触れ込みでしたので、期待値も高めでした。 読み始めてみると、孤島という舞台設定と恋人の失踪というミステリー要素があり、それなりに引き込まれます。ただ、全体的には話の流れが予想通りというか、大きな驚きが少ないように感じました。登場人物たちも個性的ではありますが、どこかテンプレート的な印象は拭えません。 前作を読んでいる方なら楽しめるのかもしれませんが、この作品単独で見ると、事件の謎解きの部分も中盤以降は緊張感に欠けるような気がします。映画の原作小説ということもあり、映像化を意識した書き方になっているのかもしれません。 無理なく一気読みはできましたが、読み終わった後の余韻や深い満足感は残りませんでした。興味深いテーマを扱った作品ですが、可もなく不可もない、そんな印象です。慎重に本を選ぶ身としては、他の作品も検討してから購入を決めるといいかもしれませんね。
最近登録された他の本の感想
2026年09月04日
アガサ・クリスティの小説は昔からよく読んでいるが、この本は作品そのものではなく、その背景にあるイギリス社会を丁寧に解き明かしてくれる一冊だ。 ミステリの女王がなぜあれほど説得力のある世界を創造できたのか、その秘密がクリスティの人生と時代背景の中に隠されていたのだと気づかされた。古い館の住人たち、階級制度の揺らぎ、女性の社会進出など、作品に織り込まれた二十世紀イギリスの変化を丹念に追うことで、これまで当たり前に読んでいた話の深さが増してくる。 新書というコンパクトな形式ながら、非常に充実した内容だ。クリスティの伝記的な部分から、歴史的・社会的な背景まで、バランスよくまとまっている。慎重に本を選ぶ方だが、このような教養的な読み物は心強い。既にクリスティの作品を何冊か読んだことがある人はもちろん、これから読もうとしている人にも心からお勧めできる。クリスティへの理解がぐっと深まるはずだ。
2026年08月03日
定年を迎える前から、世の中の急激な変化についていけていない気がしていました。特に、若い世代がスマートフォンの画面に釘付けになっている姿を見ると、何が彼らをそこまで魅了するのか、正直なところよく理解できていません。この本は、そうした疑問に向き合うきっかけをくれました。 アイドル、舞台、ファンダム経済という一見、私の世代には無縁の世界を舞台にしながら、実は人間の本質的な部分——心が何を求めているのかを鋭く描いていることに驚きました。三つの異なる立場から語り手が変わる構成も効果的で、同じ現象を複眼的に見つめる工夫が随所に感じられます。 「物語」が人を動かす力。それは昔も今も変わらないはずです。ただ、その伝え方が変わった。それを丁寧に、ドライすぎず説教的にならず描いている点が、この著者の手腕だと思います。 もっともっと若い世代に読まれるべき作品だと感じますが、私たちの世代が読むことで、世代間の溝を埋める手がかりになるような気がしました。考えさせられることの多い、良い小説です。
2026年07月21日
本シリーズも五巻目に入り、いよいよ物語も大詰めという感じがします。今回も慎重に他のレビューを読んでから手に取ったのですが、正解でした。 麗門愛之助が鈴鹿峠での激戦を経て、ついに京の都へ舞台を移すというのは、ストーリーの運びとしてなかなかいい。前巻までの積み重ねが活きている形です。盗賊・獅子丸との決着を見守った読者としては、次なる敵が朧気ながら見えてきたことに興味を惹かれます。 公家、潜伏キリシタン、薩摩藩という複雑に絡み合う勢力図。これらが煬帝の野心と結びつくという設定は、江戸期の歴史ものとしては説得力がある。愛之助がこうした大きな渦の中でどう動くのか、その秘剣の活躍が大いに気になります。 ただ、登場人物が増えてきたせいか、時折誰が誰だったかと確認したくなる場面もありました。長編小説の宿命かもしれませんが。それでも続きが読みたくなる力はしっかりあります。このシリーズ、次巻も購入することにします。
2026年07月15日
8年ぶりの鷲津政彦の登場とあれば、さすがに気になって手に取りました。「ハゲタカ」シリーズは過去作も読んでいましたが、この「チップス」はそれまで以上に緊迫感があります。 台湾の半導体産業を舞台に、米国と中国の大国の思惑がぶつかり合う様子が、まさに今この時代に起きている現実と重なって見えるのです。真山仁氏の取材力の確かさが改めて伝わってきました。複雑な国際関係や産業構造の問題を、退場するはずだった主人公を通して丁寧に描いており、単なる冒険小説ではなく、ビジネスマンとしての倫理観や覚悟まで問い直す深さがあります。 少々難しい内容ではありますが、丹念に読み進めば現在の世界情勢への理解も深まるでしょう。パート勤務で時間的な余裕が出てきた今だからこそ、こうした質の高い作品にじっくり向き合う喜びを感じています。年配の読者にこそお勧めしたい一冊です。
2026年07月15日
この本を手にしたとき、書評欄で何度も見かけた著者名に少し惹かれていました。子どもの頃の苦しさを描いた作品だと聞いていたので、どこまで読み進められるか少し心配でしたが、思い切って読んでみることにしました。 予想以上に引き込まれてしまいました。主人公の目線で綴られる物語は、正直なところ時に痛々しく、時に切実で、読むのが辛い場面もあります。しかし、その苦しさの中に、どうしようもなく前に進もうとする何かが感じられるんです。子どもという時代の絶望的な状況をここまで丁寧に、それでいて希望を失わない筆致で書ける著者の力に、改めて敬意を感じました。 年を重ねた今だからこそ、自分の子ども時代を思い出しながら読むことができたのかもしれません。当時は気づかなかった大人たちの複雑な事情も見えて、違う読み方ができたような気がします。骨太で、それでいて繊細な一冊。機会があれば、著者の他の作品も読んでみたいと思わせてくれる傑作だと思います。
2026年07月14日
本屋で手に取った時点では、タイトルだけ見て少し躊躇してしまいました。でも帯の文句や中身をパラパラと見ていたら、思わず引き込まれてしまったんです。 このエッセイは、日常生活で誰もが経験するような小さな失敗や困った場面を、ユーモアたっぷりに描いた作品ですね。著者の視点が本当に親切で、読んでいて「あ、これ分かるわ」と何度も頷いてしまいました。年を重ねると、やらかすことも増えるものですが、この本はそれを温かくほっこりとした形で受け止めてくれる感じがします。 特に気に入ったのは、失敗そのものより、そこから立ち直ろうとする人間らしさが丁寧に綴られているところ。説教的にならず、ただそういうものだよねという共感の形で読者に寄り添っている。パート勤務で毎日いろんな人間関係があるせいか、そういう懐の深さが心に沁みました。 軽く読める作品ですが、奥行きがある。もう少し長く付き合いたい一冊です。
2026年07月06日
河出書房新社の新刊紹介欄で目についた本です。正直なところ、タイトルも装丁も奇想天外で、最初は躊躇しました。でも説明文を何度も読み返すうち、これは只事ならぬ作品だと感じて手に取りました。 正解でした。こんな面白い本は久しぶりです。内ホーナー国と外ホーナー国という設定だけで既に魔法のような世界観なのに、フィルという人物が現れた途端、物語が一気に生命を帯びる。彼の演説シーン、民衆の熱狂ぶり、次々と起こる奇想天外な事件の数々——全てが絶妙なバランスで調和しているんです。 何より素晴らしいのは、このおとぎ話が実は現実を鋭く風刺しているという構造です。権力、狂信、民衆心理といった重いテーマを、こんなにも軽やかに、時に失笑を誘うような荒唐無稽さで描き出す著者の力量には脱帽します。読んでいて思わず笑いが漏れそうになるのに、同時に背筋が冷たくなる不思議な感覚。 64歳になって、まだこんなに新しい読書体験ができるのかと、嬉しくもあり驚きもあります。文庫本というお手頃さもいい。迷っている方には、ぜひお勧めしたい一冊です。
2026年07月05日
政治に関する本を読むことは滅多にありませんが、この本は思い切って手に取ってみました。参政党という存在は知っていても、その実像がどのようなものか、正直なところよく理解していなかったからです。 本書は創党から現在に至るまでの軌跡を、メールマガジンという形で丁寧に綴られています。何もない状態からスタートし、短期間で議員数を増やし、全国に支部を広げていった過程が、淡々とした筆致で記されている。一般的な政治評論書のように華やかさはありませんが、その分、現場の苦労や工夫が率直に伝わってきます。 慎重性が高い私にとって、この素朴な書きぶりは信頼感を生みます。派手な主張ではなく、地道な活動の積み重ねが描かれているからです。政治的な立場の如何を問わず、一つの政治組織がどのように成長してきたのかを知りたい方にとって、貴重な資料になるのではないでしょうか。パート勤務で時間に余裕ができた今だからこそ、こうした記録に目を通すことの大切さを感じています。
2026年06月27日
直木賞受賞作ということで、慎重に選んでこの作品を手に取りました。正解でした。 フランスの歴史を背景にした法廷ドラマとでも言うべき作品ですが、単なる歴史冒険譚ではなく、権力に立ち向かう一人の弁護士の信念と勇気が描かれています。16世紀という時代設定ですが、人間関係の機微や正義とは何かという問いかけが、現代にも通じる重みを持っていることに驚きました。 田舎の無名な弁護士が、国王という絶対的な権力に立ち向かう構図は、緊迫感に満ちています。著者の綿密な時代考証と、登場人物たちの心理描写が実に丁寧で、一気読みさせる力があります。王妃の苦境に心が揺さぶられながらも、フランソワの揺るがぬ正義感に励まされるような気持ちで読み進めました。 64年生きてきて、こういう骨のある小説との出会いは貴重です。何度も「この場面でどうなるのだろう」と先を急かされましたが、終章までの構成も見事でした。文庫本のサイズも手になじみやすく、じっくり読むのに最適でした。迷わずお勧めできる一冊です。
2026年06月27日
目を離せなくなってしまいました。娘を失った父親が犯人を追う話と聞いたとき、単なる復讐譚ではないだろうかと少し構えて読み始めたのですが、その予想は良い意味で裏切られました。 話が進むにつれて、単純な正悪の対立では済まない、複雑な人間関係や社会的背景が浮かび上がってきます。著者は登場人物たちの行動の動機を丁寧に描いており、読んでいて「本当にそうだろうか」と考えさせられることが度々ありました。特に少年犯罪という難しいテーマを扱いながらも、押しつけがましくない点が良かった。 慎重に本を選ぶ方なので、はじめは過激な内容ではないかと懸念していましたが、むしろ人間の心理描写に重点が置かれており、読んで後悔することはありませんでした。文庫本のサイズ感も手に取りやすく、何度も読み返したくなる一冊です。パート仕事の合間に少しずつ読み進めるのに、ちょうど良い長さだったのも個人的には嬉しいポイントでした。
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