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傲慢と善良

傲慢と善良

辻村深月 朝日新聞出版 2022年9月7日

感想

朝井リョウの解説に惹かれて手に取った一冊です。婚約者が突然姿を消すというミステリアスな設定から始まる物語ですが、予想外の深さがありました。 主人公が彼女の過去と向き合う過程で、恋愛関係の本質だけでなく、人間関係全般における「傲慢さ」と「善良さ」の複雑な絡み合いが浮かび上がってくる。フリーランスとして人間関係の距離感に気を使う身としては、登場人物たちの揺らぎや葛藤が他人事とは思えませんでした。 この手の作品は感動的な解決を期待されるものが多いですが、本書は読者を完全には満足させない終わり方をしている。最初は物足りなさを感じましたが、再読してみると、そこにこそ著者の誠実さがあることに気づきました。人間関係に「正解」がないという厳しい現実を突きつけられるようで、大人の読者こそ考えさせられる物語だと思います。 ビジネス書のような即効性はありませんが、人生経験を積んだからこそ響く言葉や場面に満ちています。文庫版で手軽に読める点も良好です。

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