しんの本棚
感想

三島由紀夫が絶賛したという帯文に惹かれて手に取った一冊。澁澤龍彦の『快楽主義の哲学』は、新社会人として世間一般の「正解」に縛られ始めた自分にとって、実に解放的な読書体験となった。 人生に目的などないという冒頭の言葉は衝撃的だ。だが危険な虚無主義ではなく、むしろそこから逆説的に立ち上がる「具体的な快楽」への向き合い方が、この本の真骨頂である。抽象的な幸福を追い求めるのではなく、いま、ここで感じられる具体的な喜びを信じろという論旨は、企業人生が始まったばかりの自分にとって、実用的なガイドとなった。 澁澤の筆致は煽動的とあるが、読み進めるほどに説得力を増していく。難解な哲学書でありながら、立て板に水の流麗さで理論が展開され、ページを捲る手が止まらなかった。時代を超えて新しい問いを投げかけてくる古典の強みを存分に感じさせてくれる良書である。評価の高さは伊達ではない。

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