ひなたの本棚
川のある街

川のある街

江國香織 朝日新聞出版 2026年5月7日

感想

人生の大切な場面って、大概は静かなものなんだと改めて感じさせてくれた一冊です。 主人公の望子が川の見える窓から眺める景色と、彼女自身の心の変化がそっと重ねられていく。両親の離婚という人生の転機を経験しながらも、新しい友達との出会いや父親との時間の中で、少しずつ自分の足場を作っていく。その過程が本当に丁寧に、優しく書かれています。 特に良かったのは、派手な事件や劇的な出来事がないのに、読み終わった後にじんわりとした充足感が残ることです。川の流れのように、時間が静かに流れていく中での小さな喜びや切なさが、まるで自分の経験のように感じられました。大人になった今だからこそ、子どもの視点から世界がどう見えているのか、その透明さに引き込まれました。 会社での日々の中で、こういった深い物語に触れるとリセットされるような気がします。仕事が忙しい日常だからこそ、こういった静かで味わい深い作品は本当に必要だなって思います。手に取りやすい文庫本という形も、気軽に何度も読み返せて良いですね。

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