ひなたの本棚
感想

村上春樹の新訳ということで手に取ってみたのですが、これが本当に素敵な作品でした。13歳の少年ジョエルが父に会うために南部の古い屋敷へ向かう──その設定だけで既に物語の世界観が立ち上がっていて、ページをめくる手が止まりません。 何といっても、この作品の魅力は浮遊感です。現実と幻想の間を揺らぐような、そんな不思議な雰囲気に満たされています。個性的な登場人物たちも素晴らしくて、特にアイダベルという少女の存在がいい。彼女との関係性を通じて、ジョエルが何を感じ、どう成長していくのか、その微妙な心理の揺らぎが丁寧に描かれていました。 仕事の合間に少しずつ読むのが日課になってしまうほど、引き込まれました。村上春樹の訳文も透き通るようで、カポーティの世界観をちゃんと生かしている感じがします。米文学の古典というと敷居が高く感じるかもしれませんが、新訳のおかげで本当に読みやすい。大人だからこそ味わえる、少年期の瑞々しさと陰影がこもった傑作です。

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