洋子の本棚
感想

木原音瀬の作家生活30周年を記念した本作は、これまで未書籍化だった作品たちを厳選した貴重な一冊です。雑誌掲載時に読み損ねていた「恋の片道切符」をようやく手にできたという喜びもありますが、何より感動したのは、各作品に添えられた新たな書き下ろし小説の存在です。 既知の作品も新作も、木原音瀬の筆致は相変わらず秀逸。日常のなかに隠された感情の機微を、これほどまでに繊細に描き出せる作家は稀です。豪華な漫画家陣によるイラストも、文章だけでは表現しきれない木原ワールドの奥行きを視覚的に補完していて、全体としての完成度が高い。 3巻構成との発表に、次巻への期待が高まります。人文・思想書を好む私でも、良質な文芸作品の持つ力を改めて感じさせてくれました。主婦業のかたわら、このような充実した読書体験を得られるのは、本当に幸福なことだと思います。

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