れんの本棚
感想

最近SNSでも話題になっていたので手に取ってみた。正直なところ、こういった心理サスペンス系は得意じゃないんだが、この作品は引き込まれた。 限界集落という舞台設定がいい。山奥の人間関係の濃密さ、都会とは違う空気感が、物語の不気味さを増幅させている。同居人が「猿がいる」と言い張る、その言葉だけでこんなに緊張感が生まれるのか、と驚いた。論理的に考えれば説明できる現象が、積み重なっていくうちに、読み手の心も確実に揺らいでいく。著者の描写の巧みさだと思う。 曾祖母の遺産という家族関係の複雑さも絡まって、単なる怪談譚ではなく、人間の内面の怖さへと深掘りしていく構成は秀逸だ。仕事で疲れた頭でも一気読みできる面白さがあり、かつ読み終わった後には「あの場面、もう一度読み返したい」と思わせる仕掛けが随所にある。 41歳で今更こんなことを言うのも野暮だが、良い小説はやはり人間の本質を揺さぶる。次作も注視していきたい。

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