直木賞受賞作だというので手に取ってみました。恋が終わることの悲しみを描いた短編集なんですが、読んでいてね、自分の人生を重ね合わせてしまいました。 表題作の「号泣する準備はできていた」では、恋が終わっていく過程が本当に丁寧に描かれていて、もう胸が痛くなるほど。でもね、これが不思議な力を持った作品で、悲しさの中にも温かみがあるんです。「じゃこじゃこのビスケット」という、17歳の初デートの思い出を綴った作品もいいですね。若い頃のあの淡い切なさがよみがえってきました。 12篇全部が心に響く話ばかり。人生経験がそれなりに長い私だからこそ、この作品の良さが本当によくわかるんだと思います。辛いことがあっても、それは切り抜けられる。著者がそっと囁いてくれているような感じがして、読み終わった後も心がじんわり温かいままです。文庫本だから出先でもさっと読めるのも気に入ってます。本当にいい本に出会えました。
最近登録された他の本の感想
2026年09月12日
ミステリーは気軽に読むにはちょうどいい、と思って手にした一冊です。このごろ目が疲れやすくなったので、文庫本のサイズが助かります。 最初は小学校の事件という重い題材なので、どうしようかと思ったのですが、思いのほか引き込まれてしまいました。冒頭から仕掛けられた罠というのは本当で、読み進めるうちに「あ、そういうことだったのか」という瞬間が何度もやってきます。その度にニヤッとしてしまいました。 複雑な構成なのに分かりやすく、登場人物たちの告白を通して真実が少しずつ明かされていく。パート帰りの疲れた頭でも、無理なく読み進められたのが良かったです。後半は特に目が離せず、一気読みしてしまいました。 ただ正直なところ、細部まで完全に理解できたかどうか自信がありません。でも、それも含めて楽しめる作品だと思います。このミステリーがすごい大賞というのも納得できる、なかなかの傑作でした。気軽に読みたい方にもおすすめできます。
2026年09月07日
セリーヌというお名前は聞いたことがありましたが、この『ロンドン』を手に取るまでは、正直なところどんな作品か全く知りませんでした。霧の都ロンドンを舞台にした自伝的な小説だということで、何となく昔のロンドン旅行の思い出と重ねながら読み始めたんです。 読んでみると、これはもう普通の旅行記ではありませんね。セリーヌの描く世界は独特で、どこか毒々しくて、けれど妙に引き込まれてしまう。女衒やアナキストといった、少し危険な匂いのする人物たちが登場し、街全体が息苦しい不穏さに包まれていく様子が印象的です。 文体が時に過激で、決して読みやすいとは言えません。でも七十代近い身からすると、こういった世俗的で、ある意味グロテスクな人間模様というのは、かえってリアルで興味深い。長く生きていると、人間の本質というものが見えてくるものですから。 続編だということを後から知ったのですが、独立した作品としてもしっかり成立していると思います。いい意味で予想を裏切られた一冊でした。
2026年08月14日
同じシングル女性として、どんなことが書かれているのか気になって手に取ってみました。正直なところ、期待していたほどではなかったというのが素直な感想です。 確かに、著者が指摘する社会保障の狭間や老後への不安といった問題は、他人事ではありません。私たちが直面する課題が実際に存在することは理解できます。ただ、読んでいて感じたのは、問題提起に留まっているということ。深掘りが足りないというか、「こういう大変なことがあるんですよ」という説明に終わってしまっている感じがしました。 また、収録されている当事者の声は参考になる部分もありますが、全体的に暗い話題ばかり。もう少し前向きな視点や、実際に工夫している人たちの工夫の話など、バランスの取れた内容だったら良かったなと思います。 新書らしくコンパクトにまとめられているのは良いのですが、問題が複雑だからこそ、もっと掘り下げた一冊があれば、より心に響くんじゃないでしょうか。
2026年08月14日
娘の書棚にあったこの本、タイトルが変わっていたので何気なく手に取ったんです。読んでびっくり。こんなに心がときめく言葉がぎゅっと詰まった作品があるんだなって。 嶽本野ばらさんのデビュー作だそうですが、もう本当に素敵な表現ばかり。乙女心だとか、自分らしさだとか、そういうテーマなんでしょうけれど、66歳のおばあちゃんが読んでも、何だか自分の若い頃のきらめきを思い出させてくれるんです。若い時代にこんな本があったら、もっと違う人生だったかなあなんて考えちゃいました。 文章が本当に美しくて、ページをめくるのが楽しい。難しい言葉もありますが、それでも読み進めたくなる引力があります。ちょっと疲れた日に手に取ると、心が洗われるような気分になりますね。 人生経験を重ねてからこそ、この作品の良さがわかるのかもしれません。若い人たちにはもちろん、人生の折り返し地点を過ぎた世代にもお勧めしたい、素敵な一冊です。
2026年08月07日
新装版ということで、装画の綺麗さに惹かれて手に取ってみました。ファンタジー小説は昔からよく読むので、期待を持って挑んだのですが…率直に言うと、可もなく不可もなく、という感じです。 王座奪還を目指す青年と少女の冒険譚という設定は面白いですし、登場人物たちの絆や成長の場面もしっかり描かれています。戦闘シーンも迫力があって、ぐいぐい引き込まれる部分も確かにあります。 ただね、ボリュームの割には、なんだか予想通りに進む感じがして。新しい驚きや、ああ、そう来たか!という興奮が、正直あまり感じられませんでした。十年以上前の作品と聞いているので、今読むと色褪せて見えるのかもしれません。 それでも500ページ近くをすらすら読めたのは、やはり話の運び方が上手いからでしょう。パート帰りの疲れた日でも、寝る前についつい続きが気になって、ページをめくってしまいました。気軽に楽しむファンタジーとしては、悪くない一冊だと思います。
2026年08月04日
テレビで何度も話題になっていたので、いつか読みたいと思っていた一冊です。正直、これほどまでに心を揺さぶられる本に出会うとは思いませんでした。 アウシュヴィッツの収容所での体験を綴った本ですが、決して重苦しいだけではないんです。むしろ、絶望の中にある人間の尊厳や希望について考えさせられました。著者が語る「人間とは何か」という問いかけが、これほどまで深く胸に響くとは。 パート先での友人と読書会で話題にしたときも、世代を問わず心に残る本だなと改めて感じました。新版ということで読みやすくなっているのも、より多くの人に届けたいという願いが感じられて良いですね。重い内容ですが、決して逃げたくなるような本ではなく、人生で一度は読んでおきたい作品だと思います。気軽に読む本というわけにはいきませんが、それだけの価値がある一冊です。
2026年08月03日
図書館で話題になっていたので、つい手に取ってしまいました。最初は子ども向けのファンタジーかと思ったのですが、読み進めていくうちに、大人の私たちが抱える「生きづらさ」について、こんなに深く向き合った作品だったんだと気づきました。 鏡の向こうの不思議な城で出会う七人の少女たち。みんな学校という場所で心が折れてしまった子どもたちなのですが、その描写がとても丁寧で、読んでいて胸が痛くなりました。でもね、この本が素晴らしいのは、そこからなのです。絶望的な状況の中で、少女たちがどうやって少しずつ前に進もうとするのか。その過程が本当に温かくて優しい。 最後の仕掛けには驚きました。「なるほど、そういうことだったのか!」と思わず声が出ました。決して説教的にならず、読者の心にそっと寄り添うようなストーリーテリングが秀逸です。年代を問わず、困っている誰かの力になれる本だと思います。パートの休憩時間に一気読みしてしまいました。
2026年07月31日
『薔薇の名前』の下巻をようやく読み終わりました。正直なところ、上巻を読んでから時間がかかってしまったのですが、この完全版で作者の創作ノートやメモなんかも一緒に読めるということで、改めて挑戦してみた次第です。 中世の修道院を舞台にした事件の謎解きと思っていたら、そんな単純な話ではありませんでした。次々と起きる不可解な死、暗号のような書物、難しい宗教用語や哲学的な考え方が次々と出てくるので、時々読むのを止めて考え込んでしまいました。でも、その複雑さが逆に引き込まれてしまう要因なんです。 一番良かったのは、後半に収録されている作者の覚書やデッサンを見ることで、物語の背景にある構想が少し理解できたこと。こういった資料があると、なぜこんなに凝った作りになっているのか納得できます。 難しい部分も多くて、気軽な読書という訳にはいきませんでしたが、読み終わった今は充足感が残っています。中世の修道院の世界観にどっぷり浸れました。
2026年07月29日
星新一という作家のことをちゃんと知ったのは、実は最近のことなんです。このエッセイ集を手に取った時、こんなに面白い人だったのかと、ちょっと後悔さえしました。 幼少期から晩年までの91編が時系列に並んでいるから、星新一という人の人生そのものを辿る気分で読めます。空飛ぶ円盤への熱中ぶりや、江戸川乱歩との親交なんて話は、まるで誰かから直接聞いているみたい。どのエッセイも短くて読みやすいのに、ユーモアと才気に満ちていて、クスッと笑わされたり、「あ、なるほど」と頷かされたり。 パートの帰りの時間や、休日のちょっとした合間に気軽に開けるのも良いですね。難しい理屈はなくて、等身大の星新一がしゃべりかけてくるような感じです。こんなに素敵な人の考え方や人生を垣間見られる本が、この値段で手に入るなんて。生誕100年記念というのも粋だし、盟友・真鍋博のカバーイラストも素敵です。読んでいて本当に幸せになれます。
2026年07月25日
図書館で見かけた愛蔵版、あの表紙の美しさに思わず手に取ってしまいました。金箔が光る豪華な装丁に、もう開く前からときめいてしまいます。 物語は京都を舞台にした、なんともユニークなラブストーリー。主人公の「黒髪の乙女」を求める青年の奮闘ぶりがね、本当に楽しい。森見登美彦さんの描く京都の街は、どこか不思議で、現実とファンタジーが混在したような世界観。読んでいて、思わず笑ってしまう場面がいくつもあります。 何より素敵なのは、この本の持つ温かみ。若い人たちの恋愛模様を追いながらも、人生を肯定する優しさが随所に感じられるんです。年を重ねた私だからこそ、そういう言葉の端々に心がほっこりするんだと思います。 愛蔵版は函入りで、本当に大切に手元に置きたくなる仕上がり。記念に手に入れるなら、こういう特別な版で読むのが正解だと感じました。何度でも読み返したくなる一冊です。
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