文子の本棚
感想

セリーヌというお名前は聞いたことがありましたが、この『ロンドン』を手に取るまでは、正直なところどんな作品か全く知りませんでした。霧の都ロンドンを舞台にした自伝的な小説だということで、何となく昔のロンドン旅行の思い出と重ねながら読み始めたんです。 読んでみると、これはもう普通の旅行記ではありませんね。セリーヌの描く世界は独特で、どこか毒々しくて、けれど妙に引き込まれてしまう。女衒やアナキストといった、少し危険な匂いのする人物たちが登場し、街全体が息苦しい不穏さに包まれていく様子が印象的です。 文体が時に過激で、決して読みやすいとは言えません。でも七十代近い身からすると、こういった世俗的で、ある意味グロテスクな人間模様というのは、かえってリアルで興味深い。長く生きていると、人間の本質というものが見えてくるものですから。 続編だということを後から知ったのですが、独立した作品としてもしっかり成立していると思います。いい意味で予想を裏切られた一冊でした。

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