静かな読書の本棚
深い河 新装版

深い河 新装版

遠藤 周作 講談社 2021年5月14日

感想

以前から遠藤周作の作品をいくつか読んでいたので、この新装版が出たときは迷わず手に取りました。インドへ旅立つ複数の登場人物たちが、それぞれの喪失感や苦悩を抱えながら、ガンジス河との出会いの中で何かを見つけていく。その過程が実に丁寧に描かれています。 自営業をしていると、人生経験を積む中で様々な葛藤や後悔と向き合うことになります。この小説を読んでいると、そうした人間の内面的な問題に対して、宗教や死生観がどのような役割を果たし得るのかが、押し付けがましくなく自然に伝わってくるんですね。 特に印象的だったのは、登場人物たちが異なる信仰を持ちながらも、母なる河の前では同じように人間らしく存在しているという視点です。生と死、善と悪の二項対立ではなく、それらが共存する混沌とした世界をあるがままに受け止める。そういう視点を持つことの大切さを改めて感じさせられました。 気軽に読める文章でありながら、何度も読み返したくなる深さがある。そういう本こそが本当に良い小説なんだと思います。

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