直人の本棚
グレタ・ニンプ

グレタ・ニンプ

綿矢 りさ 小学館 2026年1月27日

感想

SNSで話題になっていたので手に取ってみたが、これは確かに綿矢りさが新境地を開拓した一作だ。25年のキャリアの中で初めてのコメディ小説というのに驚いたが、それが見事に成功している。 主人公のファンキーな妊婦というキャラクターの立ち方が秀逸で、社会的プレッシャーへの怒りを痛快にぶつけていく様が実に爽快感がある。妊娠・出産という人生の重大事をこれほどまでユーモアと怒りで描き切るとは思わなかった。ページをめくる手が止まらなくなる、そういう小説のはずなのに、ここまで笑わせて考えさせられるのは稀だ。 これまで綿矢作品の澄んだ感性や深い内省にはたびたび感心してきたが、この破格のコメディタッチもまた彼女の豊かさの証だと感じた。時代的なテーマを射抜きながらも、娯楽小説としての愉しさを完全に両立させている。まさに最近のヒット小説が何か理解できる一冊である。

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