石井の本棚
感想

林真理子のこの新書を手にしたのは、キャリアについて改めて考える時期だったからだ。技術職として働く中で、「このままでいいのか」という漠然とした問い掛けを感じていた矢先だったので、タイトルの「野心」という言葉が強く引き込まれた。 本書の魅力は、著者が自らの失敗や葛藤を等身大で語っていることだ。いじめられっ子から作家へと至る過程を遡るとき、決して順調だったわけではない道のりが、むしろ野心を磨く砥石になったのだと理解できる。特に印象的だったのは「やらなかったことの後悔は日々大きくなる」という言葉。これは技術トレンドの習得や挑戦的なプロジェクトへの参画など、エンジニア人生にもそのまま当てはまる。 控えめさが美徳とされる社会で「野心」を肯定する視点は、実は勇気づけられる。完璧さを求めるあまり動けない自分に対する、ちょうど良い後押しになった。エッセイとしても読みやすく、行間から著者の人生観が伝わってくる良書である。

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