石井の本棚
司馬遼太郎全集 第27巻 世に棲む日日

司馬遼太郎全集 第27巻 世に棲む日日

司馬 遼太郎 文藝春秋 1973年5月1日

感想

司馬遼太郎の歴史小説は、技術書とは違う形で「構造」を学べる貴重なテキストだと常々感じています。『世に棲む日日』もその例外ではなく、江戸時代という時代背景のなかで、個々の人物がいかに主体的に生きるのかという普遍的なテーマが、見事に織り込まれていました。 高杉晋作という人物を通して描かれる逆境の中での創意工夫、既存の枠組みに捕われない思考の自由さ——これらは現代で新しい技術に向き合うエンジニアの心構えにも通じるものがあります。歴史小説でありながら、問題解決の本質について考えさせられる深さがあるんです。 また、司馬遼太郎の筆致の確かさが随所に光ります。時代背景の描写も人物描写も、データのような正確さと文学的な温かみが両立している。長編ながら一気読みさせる力強さがあり、読み終わった後の充足感は格別でした。歴史や思想に興味がある読者には、心からお勧めできる傑作です。

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