石井の本棚
感想

マザー・グース全4巻をようやく完結させました。工学系の仕事をしていると、どうしても論理的で実用的な本に偏りがちなのですが、この作品の持つナンセンスと奇想天外さに随分と救われた気がします。 英語圏の伝統的な童謡・わらべうたを日本語で味わうというのは、本来ならば何か失われてしまうものがあるかもしれません。ところが、この訳者の手にかかると、むしろそのナンセンスぶりが一層鮮烈に立ち上がってくる。論理的な思考回路でばかり動いている日常から、一瞬にしてずれた世界へ引っ張り込まれる快感があります。 完結巻の39篇は、それぞれが小さな詩的な完結性を持ちながらも、全体としてはカオティックで、荒唐無稽で、どこか深い何かを秘めている。楽譜付きというのも素晴らしく、リズムとしても楽しめる構成になっているのが感心します。 4巻を通じて336篇という圧倒的なボリュームをこなした訳者の労力と感性に、心から敬意を払いたくなる一冊です。

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