この世の喜びよ

この世の喜びよ

井戸川 射子

出版社:講談社 出版年月日:2022/11/10

講談社 | 2022/11/10

4.50
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

第168回芥川賞受賞作ということで、発表されてからずっと気になっていた一冊。実際に手にしてみると、期待通りの上質な読み応えでした。 表題作「この世の喜びよ」は、ショッピングセンターという日常の風景を舞台にしながら、人間の内面に静かに迫る力強さがあります。特に印象的なのは、登場人物たちが言葉にならない感情をどう抱えているかという部分。自分たちの日常もこうした無意識の層で成り立っているんだと改めて気づかされました。 収録されている「マイホーム」「キャンプ」も同様に、一見地味な日常のシーンから、思い出と現在が交錯するときの微妙な感情の変化を丁寧に描き出しています。派手な展開や劇的な起伏はありませんが、その分、読後に心に残る余韻が強い。 著者の前作『ここはとても速い川』も評価が高かったようですが、この第二小説集でも確かに新しい才能の片鱗が感じられます。仕事の合間の読書で、こうした静かで深い作品に出会えるのは、読書の醍醐味ですね。話題作として文句なくお勧めできる一冊です。

感想

芥川賞受賞作ということで手に取ってみたのですが、本当に良かった。派手な展開や強烈なドラマがあるわけではないのに、ページをめくる手が止まりませんでした。 表題作の「この世の喜びよ」は、ショッピングセンターという日常的な場所と、そこで交わされるささやかな人間関係を丁寧に描いています。読んでいると、自分もそこに立っているような感覚に陥るんです。仕事の疲れで帰宅後にぼんやり読むのに、これ以上なく心地よい。 収録されている他の作品も同じく、何気ない日常の中にある「見落としていた大切なもの」に気付かせてくれます。「マイホーム」では建売住宅の展示会での体験、「キャンプ」ではごく普通の家族の時間が、こんなにも物語になるのかと驚きました。 41歳になると、毎日が結構ルーチン化してしまうんですが、この本を読むと世界が少し新鮮に見え直す感じがします。余韻の残る読み終わりも素敵。仕事のストレスで疲れているあなたにこそ、おすすめしたい一冊です。

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