橋本 美月の本棚
小さいおうち

小さいおうち

中島 京子 文藝春秋 2012年12月4日

直木賞受賞作ということで、つい手に取ってしまいました。昭和初期の東京を舞台に、ある女中の視点から描かれた家庭の日常と人間関係のお話です。 映画化も決定したという触れ込みでしたが、読んでみると確かに映像化に向く、丁寧な情景描写が随所にあります。戦争の時代へ向かう中での、家族と使用人との関係、その微妙な距離感が印象的です。 ただ、正直なところ、これといって胸を打たれるような場面には出会いませんでした。もちろん、作品として完成度は高いですし、丁寧に書かれているのは伝わります。でも、私個人としては「ああ、良い本だな」という知的な満足感はあっても、心が揺さぶられるような感動までは届きませんでした。 話題作だからと手に取った自分の期待値が高かったのかもしれません。年配の方や、昭和の世界観をゆっくり味わいたい読者さんには、もっと響く作品なのかもしれませんね。決して悪い本ではないのですが、私には「可も不可もなし」という印象に落ち着いてしまいました。