みかんの本棚
ゆっくり急げ

ゆっくり急げ

ヤマザキマリ 中央公論新社 2026年9月7日

感想

ヤマザキマリのエッセイ集を読み終えて、思わず深呼吸をしてしまった。彼女の人生の濃密さに圧倒されたからだ。 イタリアと日本を往き来し、漫画家として30年、そして妻・母・娘として幾多の喜怒哀楽を経験してきた著者の言葉は、単なる自叙伝ではなく、人生そのものへの深い思索に満ちている。特に印象的だったのは、予測不可能な出来事ーーパンデミック、愛する者の喪失、予期しない引越しーーをいかに受け入れ、そこから何かを創造していくかという姿勢だ。 「人生は思い通りにならないことで溢れている。だから面白い」という冒頭の言葉が、66篇を貫く哲学として機能している。フリーランスとして生きる私にとって、予測不能性は日常であり、時には恐怖の源にもなる。しかし、著者のように知的で誠実に、その状況と向き合う姿勢に深く共感した。 軽妙で知的なユーモアも秀逸。人文書や思想書を好む読者ならきっと満足する一冊だ。

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