あーちゃんの本棚
感想

衝撃を受けました。このような作品があったのかと。 人間の深層心理の奥底にある、理解しがたい執着や歪んだ美意識というものを、ここまで丁寧に、そして優美に描ききった小説は珍しいです。蝶という存在を通して語られる主人公の内面は、怖いとも美しいとも言い難い、複雑で感情的な世界へ読者を引き込みます。 管理職として日々、人間関係や組織の中で起こるさまざまな葛藤を目にしていますが、この作品に描かれている心理の彷徨いようは、あくまでフィクションでありながら、人間とは何か、狂気と正常の境界とは何かを改めて考えさせられました。 文体の美しさも秀逸です。重い題材を扱いながらも、どことなく耽美的な雰囲気を漂わせている工夫は見事。巻末の特別対談も興味深く、作品をより深い角度から味わうことができました。 気軽に読む気持ちで手に取った一冊ですが、読み終わった後はしばらく余韻に浸ることになりました。自分の読書の幅を広げてくれた、大切な一冊になりそうです。